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(3) 外国仲裁判断の承認と執行
外国仲裁判断の承認と執行に関する各国内法の規定を条約によって統一しようとする計画は、従来、二国間あるいは多数国間において試みられている。これに対して、世界各国を網羅し、外国判決の問題と切り離して、外国仲裁判断の承認と執行のみに関する独立した条約として、1923年の「仲裁条項に関するジュネーブ議定書」、1927年の「外国仲裁判断の執行に関する条約」があり、また、これらの条約に代わるものとして設けられた1958年の「外国仲裁判断の承認と執行に関する条約」がある。1996年3月現在で、1958年ニューヨーク条約の批准国は108力国である。その他、わが国との間に双務的に条約を結んでいる国が14力国ある。例えば、昭和28年の日米通商航海条約第4条第2項に仲裁判断に関する規定が設けられている。
2. 仲裁条項の内容
(1) 仲裁条項の効力
仲裁条項を検討する場合、まず、これが法律上有効とみなされうるための要件を考なければならない。これは各国内法の立場から検討されるべき問題であるが、例えば、わが国の場合、仲裁契約の要件として、「一名または数名の仲裁人をして争の判断を為さしむる合意は、当事者が係争物に付き和解を為す権利ある場合に限り、其の効力を有す」との規定(公催仲裁法第786条)があり、また、「将来の魚に関する仲裁契約は一定の権利関係およびその関係より生ずる魚に関せざるときは其の効力を有せず」(同第787条)と定められている。選定された仲裁人に欠員が生じたり、その他の理由で欠席しまたはその職務の引受を拒むなど、その職務の履行を不当に遅延したとき、あるいは、仲裁人がその意見の可否同数なる旨を当事者に通知したとき、これに対する補充選定その他の対応策があらかじめ当事者間で合意されてないと、仲裁契約はその効力を失う(同第793条)。
各国の仲裁法の間には相違があるけれども、いずれにせよ、仲裁契約(仲裁条項)は仲裁手続および仲裁判断の基礎であるから、これが有効でないときは、これに基づいて行われた仲裁手続も仲裁判断も無効とされる。それ故、外国仲裁判断の承認と執行を可能ならしむるためには、まず、当事者間でなされた仲裁契約がいずれの国においても有効とみなされるようにしなければならない。1923年のジュネーブ議定書はこれを目的とするものであり、また1958年ニューヨーク条約も仲裁契約の効力を明確に定めている。

 

 

 

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